それを愛と呼ぶのなら

岸和田駅で電車を降り、外に出る。商店街の反対側にあるロータリーでタクシーを捕まえ、ふたりで乗り込んだ。

真尋が運転手さんに目的地である住所を伝えたのを合図に、車が走り出す。


住所、知ってるんだ。思わずこぼした私に、真尋は力なく笑って言った。一応教えられてたから、と。


ねぇ、真尋。

教えられたその情報、ちゃんと持ってたんだね。捨てずにいたんだね。

それってもう、答えなんじゃないの?

あんたはお母さんに会いたいんじゃないの?


言いたいことは山ほどあるけど、全部飲み込んだ。

ここから先は、私が踏み込むべき領域じゃないってことは、もう知ってるから。



乗っていたタクシーが去っていくのをぼうっと眺めながら、真尋が動き出すのを待った。

照りつける太陽は相変わらずうざったくて、つい眉間にシワを寄せてしまう。