それを愛と呼ぶのなら

壊してしまえばいいんだよ。

全部、ぜんぶ……私達の世界が、私達の手によって壊れる前に。


……なんて。そう思うけど、優しいあんたにそれはできないよね。


「……あの人が、やっと掴んだ幸せなんだぞ」


ほらね。言うと思った。

真尋はいつだって、自分より他人のことを優先する。

それって何よりもシンプルで、だけど何よりも難しくて消耗するんだって、知ってるのかな、この男。


「あんたがそれでいいならいいんじゃない?ぶっちゃけ、私には関係ないし」

「……」

「お腹を痛めて生んだ子供が会いに来て煩わしいと思う人の幸せなら、壊してやった方がいいと思うけどね」


真尋は何も言わなかった。

怒ったのか呆れたのか、はたまた、何か思うところがあったのか。

この男に、それを悟らせる隙はない。そんなこと、もう知ってる。


だから好きにしなよ。

人のことばっかり考えて、自分を犠牲にする必要なんてないんだから。