それを愛と呼ぶのなら

こんな時、可愛げのある女の子は「そんなことないよ」って誤魔化すのかな。

……なんて、こんなことばっかり考えてるな私。

他人なんてどうでもいいはずなのにな。おかしいな。


「……多分ほんとに、会わねえよ」


真尋がそうこぼすように言ったのは、ちょうど列車が大きな川を渡っている時。

視線を向けると、彼はぼうっと前だけを見て、電車の振動に揺れていた。


「再婚してるんだ、数年前に。確か……子どももいる」

「え……」

「それなのに、最低な不倫男との子どもが会いになんて来たら、幸せぶち壊すだけだろ」


一切の感情を消して、真尋は淡々と言う。

なんでもないことのように……ううん、聞く相手にそう見えるように。

それが苦しくて、おざなりになっていた彼の右手を、左手で握った。


「……何」

「別に?」


私も前だけを見て、答える。


「別にいいんじゃない?ぶち壊しても」

「……は?」

「だってあんたのお母さんは、その最低男のところにあんたを残していったんでしょ?それなのに、会いに来るななんて勝手、誰が言えるの」


大人の勝手で、傷ついた私達。

真尋はきっと、私よりももっとずっと傷ついた。