あの頃の私達は真っ暗闇の中にいて
もがいて溺れて前が見えなくなって
それでも這い上がろうと必死だった



『全てを棄てたいって……時々思う』

『じゃあいっそ、ふたりで消えてしまおうか』


心の傷を舐め合って お互いの涙を掬って
そこに芽生えた感情は きっと愛と呼ぶには十分だったけれど

たった18歳だった私達は 思うままの言葉を口に出来るほど子供でも大人でもなくて


『葵だけは、何があっても幸せになれ』

『お前が幸せならハッピーエンドだろ』


離れた温もりがやっと気付かせてくれた


気丈に振る舞っていた君は 本当は誰よりも繊細で脆い人だということを
私達が巡り会うずっと昔から 私のことを想ってくれていたということを


そんな君を 君が細いと言ったこの腕で力いっぱい抱き締めて守りたかった