目が眩むほど太陽が降り注ぐ屋上には、私以外誰もいなかった。


「ハル?」


呼びかけても返答はない。

ここに来ればハルに会えると思っていたけど、そりゃ、ハルだってずっとここにいるわけじゃない。

すこしがっかりしたけれど、納得もした。


フェンスに近づいて、街を見下ろす。


普段は手も届かない信号機が、あんなに小さく見える。

道路を行きかう人々が、米粒のように小さく見える。

きっと、信号機も、人も、店も、家も、この街を構成する全てが街を動かす歯車で。

歯車が動くから、この街が動く。


きっと私も、歯車の部品の一部で。

私もこの街を、世界を構成する一部で。

だけど小さくてどうでもいい部品だろうから、それが突然なくなったとしても歯車は動きを止めない。

いなくなった私を他の部品が補って、何事もなかったかのように、変わらず歯車を回す。


ああ、いつかも思った。

悩み苦しむ私なんてあまりにちっぽけな存在で。

きっと、この世界からそっと消えたって、何事もなかったように世界はきっといつも通りの今日を繰り返すんだって。


そのくらいちっぽけな私に、一体何ができるというのだろう。