きみに触れられない

教室に戻って、自席につく。

お弁当箱を机の上に出した。

お母さんが仕事で忙しいのにつくってくれたもの。

きっとすごく考えて栄養がたっぷり詰まった、愛情そのもの。


だけど、どうしても、胸がつかえて食べられない。

食べようって、気力が起きない。


どうしようかと溜め息を吐くと、私だけに聞こえるような小声で「ミサ」と呼ばれた。

顔を上げれば、心配そうな顔をしたカナがいた。

「あ…なに、どうしたの?」

咄嗟に笑顔をつくれば、カナはさらに心配そうな顔になって眉間にシワを寄せた。


「ミサが、思い詰めたような顔をしてるから」


だから心配だ、とまでは言わないけど本当はそう言いたいんだってことが表情から伝わった。


「心配してくれて、ありがとう。ごめんね。でも、大丈夫」


そう言って笑ってみせた。

けれどカナは固い表情を崩さなかった。


「本当にダメだったら、カナに言うから」


カナにそういうと、ムッとして「本当にダメになる前でいいんだけど」と言った。


「頑張らせてよ。もうちょっとだけ」

「頑張りすぎなんだよ、ミサは」


カナは溜め息を吐くと席に着いた。

それからチャイムが鳴って、結局お弁当は食べられないまま午後の授業が始まった。