『俺、ミサが好きだ』


なんで、私だったんだろう。


ぽちゃん、と雫の音がお風呂場に響く。

湯船に鼻下まで浸かって、ぶくぶくと泡を立ててみる。

息が続かなくなって顔を出した。


「はあ…」


カナの声が脳にこびりついて離れない。


『本気でミサのことが好きだから』


どうしてカナは私を好きでいてくれるの?


こんなに暗い思考ばかりする、どうしようもない私のことを。

自分でさえ嫌いになる私のことを。


きっと圧倒的に綾芽ちゃんの方が魅力的で素敵で、一緒にいたら幸せになれるだろうに。


どうして綾芽ちゃんじゃなくて私だったの?


「分からない…」


私は目を閉じて湯船に沈んだ。


分からない数学の問題は、公式を使ったり形を変形させたり、少し変化させれば解けるのに。

分からない英語の問題は、辞書を引いたり構文を覚えれば内容を理解できるのに。


分からないこの問題は、一体どうやって解けばいいんだろう。