「俺達、ずっと一緒だったよな。

生まれてから今までずっと、家も隣同士で、仲良くて、クラスもずっと同じで。

俺、ミサのことを誰よりずっと見てきた。


…なんて、こんなこと、並べ立てても仕方がないよな。

言いたいことはたった一つだけだから」


それからカナは私から目をそらして呼吸を一つするとまた私を見据えた。




「俺、ミサが好きだ」




まっすぐな、カナの目だった。



「え…?」



カナが、私のことを、好き?


あのカナが?

クラスでも人気者で、部活でもエースで、何だってそつなくこなしてしまう、明るくて快活な、あのカナが?


「信じられないって顔してる」


カナは可笑しそうに少し笑った。


「でも、本当だから。

本気でミサのことが好きだから」


カナはそう言うと自転車に跨った。


「返事は今すぐじゃなくてもいい。

いつでもいいから」


じゃあまた明日。


カナはそう言い残すと颯爽と行ってしまった。

私はひとり状況が呑み込めず立ちつくしていた。


綾芽ちゃんの言葉がよみがえる。


『塩谷君には最初から、好きなひとがいた』


それが、私だってこと?


「ありえない…」


カナが私のことを好きなんて、ありえない。

だけどあの目は。

まっすぐ見据えるカナの目は、本当だって分かる。


私は長く息を吐きだした。

心臓はバクバクと大きな音を立てて心拍していた。