「ミサって最近いつも屋上にいるよな?」

「え?あ、うん。そうだね」

いきなり何の話をしだしたのか分からず、反応が少し遅れた。

カナはそんなことを気にする様子もなく、話を続けた。


「俺、最初にそのことに気づいたとき、ミサに彼氏でもできたんじゃないかと思って結構心配したんだよ」


カナは私に視線を落とすと少し笑った。


「私に彼氏なんかできると思う?」


カナの笑顔が見れて少し安心した私もつられて笑った。

そうだよな、という答えが返ってくると思っていた。

なのに、違った。


「思う」


カナははっきりと言い切った。


「え…?」


私は返し方が分からなくなって戸惑う。


「いつも心配してた。いつ誰がミサの魅力に気づくだろうって。いつ誰がミサにアプローチするだろうって。
ずっと、心配してた」


そういう冗談を言っているのではないかと思った。

だけどカナの表情は真剣で、これが嘘ではないと、冗談ではないと悟った。


「カナ、何を言っているのか分からないよ」


私は目を伏せてそう言った。


カナが何を伝えたいのか、何を伝えたくてこんなことを言っているのか、意図も意味もまるで分からない。


するとカナは「だよな」と自嘲気味に笑った。


「はっきり言わなきゃ、ダメだよな」


小さい声で呟くと、カナはその足を止めた。


「か、な…?」


それに気づいて私も足を止めた。