おまけにハルの笑顔を思い返しただけで心臓の鼓動は一気にその速度を上げる。

きっとこれが恋に落ちている証拠なのだと思った。


それから私は下駄箱に向かった。

夕日に染まる下駄箱に座り込んでいた人物を見つけて思わず声を上げる。


「か、カナ?」


するとカナは顔を上げて、真剣な顔で私を見て「おう」と返事をした。


思ってもいなかった人物が急に現れて、私の心臓はどくんと跳ねた。

「どうして、ここに?というか、部活は?」

「部活は今日休みだ」

慌てる私と、冷静なカナ。

「そっか…」

いつもとは違う関係に、私はどぎまぎしてうまく答えられない。


「じゃ、じゃあ、誰か待ってたの?」


私は笑顔を顔に張り付けたまま、慌ててあたりを見渡した。

けれどそれらしき人物はおろか、人の姿さえ見えない。


「ああ」


カナは落ち着いた声で返事をした。


「へえ、誰?クラスメイト?部活の人とか?早く来るといいね」


じゃあ、私はもう帰るね。


そう言ってカナの隣を通り過ぎようとしたときだった。


パシッと腕を掴まれた。

驚きで一瞬思考回路が止まる。


「…か、な…?」

恐る恐る振り返ると、カナはまっすぐな目で私を見ていた。

「ミサだよ」

「…へ…?」

「俺が待っていたのは、ミサだよ」


私は目を見開いた。

カナのまっすぐな目から視線は逸らせなかった。

なんと返事をしたらよいのかわからず、私は固まっていた。

昇降口で固まる私とカナを夕日が照らしていた。