それまでは窓がついて掃除もそれなりに行き届いていたのに、急に暗く埃っぽくなる階段と階段の上にある扉は屋上へ続いている。

それはなんだか天国へ続く扉のようにも思えて、逃げ出したい一心で取っ手に手をかける。

まるで断末魔のような、金属同士が擦れる嫌な音が響いて、それはようやく開いた。


「眩しい」

思わず腕で目を覆った。

あまりにも眩しい青空が広がっている。

白い雲がゆったり浮かんで流れている。

爽やかな風が頬を撫でた。


__空って、こんなに大きかったっけ。

久々に空を見上げた気がする。

うんと腕組みをして伸びをすると、少し心が晴れ渡ったような心地がした。


__ああ、カナに悪いことをしてしまったな。

あの時のカナの顔を思い出して、胸がぎゅっと締め付けられた。

また、謝らなきゃ。それから、ありがとうって言わなきゃ。


私は屋上のフェンスに手をかけて街を見渡した。

大きさもそれぞれの建物、家々のカラフルな屋根、道路を走っていくたくさんの車、向こうの丘の上に立つ鉄塔、お父さんの勤める病院。

小高い丘の上に立つこの学校からはいろんなものが見えた。

眩しくて、憧れで、だけどずっと見ていられた。


__私、こんな街に住んでいたんだ。

この街で、生きているんだ。

そんな、当たり前なことを思った。


「珍しいな、ここに人がいるなんて」


後ろから声が聞こえて、慌てて振り替える。


その瞬間、ふわりと風が駆け抜けたような気がした。