「げっこうき?」
月姫は復唱した。
「どうだ?」
「まるで楊貴妃(ようきひ)みたいな響きです」
月姫は少々戸惑っていた。
「月光を浴びるお前があまりに美しくて、思いついた名前だ」
「私には大袈裟すぎて、ちょっと恥ずかしいです」
「お前は自分を過小評価しすぎだ。少し自分に自信を持て」
「ですが……」
「京女の華やかさも、肥前の遊女のあでやかさも、全て色褪せるような美しさを、お前は持ち合わせている」
「買い被りすぎではありませんか? 私にそんな」
頬を薄紅色に染めて、月姫は冬悟から目を逸らした。
「お前は月のように、これからも私を惑わし、癒し続けてほしい」
「冬悟さま」
再度、抱き合う二人。
月に照らされながら。
「花も月も、いつしか移ろいゆくものです」
月姫が口にした。
「何もかもが変わりゆく定めでも、冬悟さまだけは変わらずいてください」
「私が? 変わるわけはない」
「……」
「たとえどんな妨げが生じようと、私は月姫だけを愛し続ける」
「冬悟さま」
「だから……姫も私から離れないでいてほしい」
「約束します……」
月姫は復唱した。
「どうだ?」
「まるで楊貴妃(ようきひ)みたいな響きです」
月姫は少々戸惑っていた。
「月光を浴びるお前があまりに美しくて、思いついた名前だ」
「私には大袈裟すぎて、ちょっと恥ずかしいです」
「お前は自分を過小評価しすぎだ。少し自分に自信を持て」
「ですが……」
「京女の華やかさも、肥前の遊女のあでやかさも、全て色褪せるような美しさを、お前は持ち合わせている」
「買い被りすぎではありませんか? 私にそんな」
頬を薄紅色に染めて、月姫は冬悟から目を逸らした。
「お前は月のように、これからも私を惑わし、癒し続けてほしい」
「冬悟さま」
再度、抱き合う二人。
月に照らされながら。
「花も月も、いつしか移ろいゆくものです」
月姫が口にした。
「何もかもが変わりゆく定めでも、冬悟さまだけは変わらずいてください」
「私が? 変わるわけはない」
「……」
「たとえどんな妨げが生じようと、私は月姫だけを愛し続ける」
「冬悟さま」
「だから……姫も私から離れないでいてほしい」
「約束します……」