4月。

無事に大学に合格できた俺は、めでたく今日は大学の入学式。


幸と見た景色に似た、桜の花びらの絨毯が飛んでる青空が広がる。


俺は、顔を上にあげて、青空を見つめる。


『見て、黒田くん!綺麗だね』

って彼女が隣で言ってくれる気がして。


『急がないと入学式、遅刻するよ!』

って腕を引っ張ってくれる気がして。



あの時、君に出会っていなかったら。

今の俺はいない。






「大翔〜〜!写真とるわよー!」

お袋がそう叫ぶ。


大学生にもなって…写真なんて…


そう思いながら、渋々、みんなの待ってるところに向かう。


「似合ってんじゃん、髪」

一緒に来ていた兄貴に、黒く染めた髪を褒められる。


「ヤンキー黒田くん、卒業ってか!」
と親父。


「おめーら、あんま調子乗んなよ!」


「あ、写真、お願いしてもいいですか?」
親父が歩いてる新入生らしき人に頼む。

バカっ。

新入生は快く、カメラを手に持って
「いきますよー!」
と声をかける。



「ほらほら、笑って笑ってー!」





ぐちゃぐちゃになりながら、家族4人で写真を撮る。




幸。


お前のおかげで、俺は今、幸せだよ。




生きてくれてありがとう。



生まれてきてくれてありがとう。


たくさん言い合いして、ケンカして、すれ違って。


たくさん、たくさん泣いたけど。


誰よりも素敵な時間を過ごせた。


何よりも大切なものをもらった。






なぁ、幸。



ありがとう。


愛してる。



俺は、ネックレスに付けられている、指輪をギュッと握りしめて、桜の花びらが舞う、大学の門を通った。







──END──