「なんか、嘘見たい」
岡本が夜空を見上げてそう言う。
結婚式と二次会が終わってから、2人で病院の屋上で空を見上げる。
空も俺たちを祝福してるみたいに星が綺麗だ。
「ありがとうな。岡本」
「まさか、黒田くんと結婚式するなんて。思わないよ」
「俺だって、思わなかったよ。お前のことうざいって思ってたし」
「うんっ」
「でも、今は岡本がいないと抜け殻みたいになる」
「またそんなこと言って…」
車椅子から降りた岡本とベンチに座りながらゆっくり話す。
「綺麗だね。空」
「お前がな」
「やめてよ!……はぁ…あとどれくらいい、見られるかな?空」
「何言ってんだよ。いつでも見られるよ。ずっと」
願望だ。
ずっと止まればいいのに。
この時間がずっと。
岡本と、あとどれくらい、こうして空を見上げられるだろうか。
「幸…」
結婚式に一度呼んだだけの名前をもう一度呼ぶ。
「照れるからやめてよ〜〜」
「幸…」
「もー何…」
暗くてよく見えないが、かすかに見える赤くなった幸がかわいくて、ちょっと意地悪しそうになる。
「俺のことも名前で呼んでよ」
「えー。やだ」
「呼ばないとチューする」
「え、ちょ、待ってやだ」
「やだってなんだよ。旦那からのチュー断わんな」
「呼ぶから、呼ぶから」
そんなに嫌かよ…
「…ヒロ…ト」
「聞こえない」
「もー!大翔!」
「なに?」
「何って…黒田くんが呼ばせ…んっっ」
幸に少し強引にキスをする。
「黒田くんって言ったから、罰」
「…バカッ」
「何その顔」
「へ?」
「誘ってるな」
「何言ってんの…」
「初夜だ、初夜」
そう言って、ふざけて幸のシャツの中に手を入れようとする。
実際、今まで我慢できていた俺を褒めて欲しい。
「…幸、愛してる」
そして、妻に甘いキスをした。