「おはよう、渚くん」


あたしは、自分の机にスクールバックを置いて、クラスメートと話していた隣の席の渚くんに声をかける。


「あ!おはよう、ほのかちゃん!」


すると、渚くんはなんだか嬉しそうにあいさつを返してくる。


何か、良いことあったのかな…?



不思議に思いながらも席に着くと、渚くんはガタンッと椅子をあたしの方へ向けて座り直す。


梨子は剣道部、優真くんと琢磨くんは、テニス部の朝練に参加しているので、まだ教室にはいない。


渚くんは、花屋さんのお手伝いがあるらしく、部活には入っていないらしい。


あたしも、お母さんの事があるから、部活には入らなかった。

始業式の日は、全部活式典でお休みだったけど、また今日から再開するから、みんなで一緒に帰れるのはまた先になりそう。



「あれ……ほのかちゃん、ちょっとこっち向いて?」

「え…?」


渚くんは、あたしに顔を近づける。


ービクッ


肩が異常なくらい飛び上がる。

それを見て、渚くんは困惑したようにあたしを見た。


「ごめん!驚かせた?」

「ううん、大丈夫……ごめんね」


変な気、使わせちゃったかな……。


まだ、男の人に触れられるのは怖い。


あの男を思い出してしまうから…。