「人間も動物だと言うことです。


ほとんどの哺乳類は
自分の感情が耳に現れます。


馬や犬が機嫌の悪いときは
耳を伏せたりするのは有名ですけど


私たち人間だって
驚いたり心が揺れ動いた時


微かに耳が動く」


中村は息をのんだ。


「じゃあ平野さんがボクと言った瞬間

かすかに耳が動いた人物が
いたと言うことですね!


誰なんですかそれは?」


中村に聞かれた平野は
頭を掻いた。


「いやいや最近老眼がひどくてね。

そんなわずかな動きが
私にわかるわけないでしょ」



「なんじゃそりゃ!


じゃあいままで長々と話してきたのは
何の意味があったのよ!」


エキサイトする中村ととぼけた平野を乗せて
車は美しい緑の木々の中を走っていく。


平野が心の奥底で何を感じたかは
誰もわからず謎のまま


2人は去って行った。