水男(ミズオ)

平野は少し笑った。


「さっきはすいませんでした。
脅すようなことをして。


実はちょっと試してみたんですよ」


平野はそう言って
背広のボタンを開けた。


そこにはホルスターに入った
小さな拳銃が見えていた。


「私の挑発に乗って
あなたが襲ってくるような人物だったら


私は迷わず撃ち殺そうと
思っていたんです。


全知全能の力を持つ悪人など
危険極まりないですからね」


そう言って平野は笑う。


「まあ。あなたが悪人じゃないとは
分かっていましたけどね。


念のためですよ。


時間を取らせて
申し訳ありません。


もう仕事に行ってくださいよ。
こんなところで私と話しているより


あなたを心の底から思っている人の元に
行くべきです」


平野はエレベーターのボタンを押した。


亜美が平野に会釈をして
エレベーターに乗る。


「彼が私の所までやってきて
必死で訴える姿は本物でしたよ。


あなたもわかっているはず。


行ってらっしゃい」