水男(ミズオ)

亡霊のような俊介を見て
亜美はつぶやく。


「俊介さん。一度は好きになりかけた人」



「あ……あ……」


俊介はもう言葉が出てこないほど
喉の渇きに襲われている。


亜美は俊介の姿を
じっと見つめている。



「でもあなたとキスをした瞬間


あなたの憎悪に満ち溢れた心が
見えてしまった。


どこまでも深い闇のような心。


こうなる前に
あなたを救ってあげたかった……」


亜美は時計を見つめる。


秒針が規則正しく動く様を
目で追う亜美。


「あと30秒」


亜美が秒針を見ながら
つぶやく。


俊介の自我は崩壊しかけていた。


焦点の定まらない目で
冷蔵庫を見つめる俊介。


「まりこ……みさと……」


切り刻んでしまった女性の名を呼んで
笑い出す俊介。


地獄。


大きな罪を背負った俊介は
地獄への片道切符を





手にしようとしていた。