水男(ミズオ)

「水があふれている?
そんなところどこにあるんだ?


この部屋に泉があるとでもいうのか?
そんなわけがない!」


亜美の言葉を全力で否定する俊介。


しかし俊介の言うように
水があふれているところなんて
確かに見当たらない。


この部屋の中のどこを見回しても
水があるようには見えなかった。


でも亜美はこの部屋には
水があるという。


一体どこにそんなものが
あるというのだろうか?


謎めいた言葉を発した亜美が
今度は指を1本立てて


こう言った。


「あと1分。

人生の終わりまであと1分」


俊介はもう喉の渇きが
限界まで来ている。


かきむしった喉から
血がにじんでいる。


「水をくれ……」


のどがカラカラで
声もかすれた俊介が


あるはずもない水を求めて
部屋の中を彷徨っている。