水男(ミズオ)

「あなたのお母様は悪性のリンパ腫。
余命は一か月ほどです」


僕はこの医者が言っている意味が
わからなかった。


消毒液のにおいがする
白い壁の部屋にふんぞり返っている医者は


まだ言葉をつづけようとしている。


「3年前に発症したリンパ腫が
再発されたようです。


残念ですが手の施しようが
ありません」


僕は幽霊のようによろよろと立ち上がり
医者の部屋を出た。


窓の外にはもう春が
すぐそこにやってきているのに


そして僕の右手には
苦労して勝ち取った


合格通知が握られているのいうのに


僕たち親子は
永遠の冬に取り残された。