水男(ミズオ)

亜美が振り返った先には
高山が立っていた。


珍しく真剣な表情。



「なに?」


感情のこもっていない言葉を
返す亜美。



高山は一つ咳ばらいをした後
静かに言葉を発した。


「これから話すことは悪口でも嫉妬でも
何でもないんだ。

だから聞いてくれるか?」


感情を表さず
冷たい顔の亜美。


高山の言葉に
返事を返さず


下を向いている。


「俺は見たんだ。


あの夜……


美里が姿を消したあの夜に」


息をのむ高山。

亜美は無表情で
何を考えているかわからない。


「俊介を見た」


そう言った高山は
ため息をついた。


何も言わず
感情も表さず


マスクをかぶっているかのような
亜美の顔。


「本当なんだ!


あの夜
俊介は美里と一緒にいた。


間違いないんだ。
信じてくれ!」