ピーク・エンド・ラバーズ



彼の顔を見ずに帰ったあの日。ごめん、としか言えなかったあの日。

津山くんといると、正しい自分じゃいられない。冷静に、後になって考えれば普通に分かることも、彼と一緒にいると思考が鈍って流されて、とんでもないことを平気でしてしまう。

そんなの私じゃない。私は本能とか、欲望とか、そういう汚れたものに負けたくない。
真っ直ぐ堅実に正しく、歩いていたいのだ。


「……ごめん。あの時はちょっと、急用思い出して」

「冬休み中、メッセージ送っても全然返信くれなかった」

「忙しかったの。親戚の家行ったり、ばたばたしてて……」

「急に話しかけないでって言われて、悲しかった」

「だって、それは……!」


咄嗟に顔を上げて彼の方を振り返ってしまう。
分かっていたのにやってしまった。彼の目に捉われたら最後、逸らせない。


「それは、なに?」


いつの間に起き上がっていたのか。津山くんは憂うように眉尻を下げて、私を急かした。
そのいかにも苦しくて辛くて悲しい、といった顔が苦手だ。強く言えなくなってしまう。


「俺、すごい悲しかった。何でだろうってめっちゃ悩んで、寝れなくて、ずっと頭痛くて」

「……うそ」

「ほんと。頭痛くなるくらい、西本さんのこと、ずっと考えてる」