ピーク・エンド・ラバーズ



その言葉は多分、自然と零れていた。
嫌いになりたいのに嫌いになれないのは、いま感情をさらけ出している津山くんが好きだから。嫌いになりたいのは、好きになりたくないから。

私はまだまだ、抗うと思う。負けたくないのだ。
これを恋と定義するには早計過ぎるし、私のプライドも許さない。


「こっちって何……?」


戸惑ったように眉尻を下げる彼の顔が、耳が、赤かった。


「んー、普段の津山くんはへらへらしててむかつくけど、落ち込んでる津山くんは人間味があるっていうか」

「それ褒めてなくない? 褒めてないよね?」

「褒めようとしたつもりはなくて」

「辛辣ぅ……」

「まあとにかく、」


不服そうに下からジト目で私を非難する彼を、宥めて言う。


「必死になってる津山くんは、嫌いじゃないよ」


そう告げた途端、津山くんは大きく目を見開いた。

饒舌じゃなくて、うまく話せない彼が。お洒落なカフェじゃなくて、たい焼き屋さんに来る彼が。そんな彼の方がずっと、私の心臓を揺らしにくるのだと思う。

あまりにも彼がじっと私を見つめたまま動かないから、気まずくなって顔を背けた。


「西本さん」


津山くんの視線がこちらに向いているのが分かる。


「……ありがと」


どういたしまして、と。ぶっきらぼうに返すのがやっとで、自分はつくづく可愛げがない女の子だった。