彼の指先は一つの看板を指していた。その文字をなぞるように目で追いかけてから、口に出す。
「……たい焼き?」
白い背景に、黒文字で大きく「たいやき」の四文字が連なっている。ところどころ剥がれているのが、年季の入ったお店であることを教えてくれた。
「ここのあんこそこまで甘くないし、大丈夫だと思うけど……ごめん、嫌いだった?」
不安げに問いかけてくる津山くん。
あんこ、という響きが妙に可愛くて、頭の中で反芻する。あんこ。男の子が言うから、可愛いのかもしれない。
返事をするのを忘れて、そんなくだらないことを考えていたからか、津山くんの眉尻がどんどん下がっていく。
私は慌てて首を振った。
「あ……いや、そうじゃなくて。意外で」
「え?」
「津山くんも、こういうとこ来るんだなーって……」
SNS映えとか、何とか。女子みたいにそんなのを気にして生きていそうなイメージが、何となく勝手にあったから。
長ったらしい横文字の名前のジュースや、写真を撮りたくなる綺麗なスイーツ。彼女が行きたいと言ったら臆せず自分もついて行って、一緒にはしゃいでそうな感じ。
「もっとお洒落なカフェとか行ってるイメージあった」



