並んで歩きながら、津山くんがそんなことを聞いてくる。
街中には行かないという言葉は本当だったようで、私たちは駅に繋がっている学校前のバス停とは反対側に、ひたすら向かっていた。
男子と二人で放課後出掛けるなんて、私にとっては一大イベントだ。でも津山くんにとっては、何十回も何百回も繰り返してきたことなんだろう。
そう考えると無性に苛々して、会話に乗り気になれなかった。無愛想に一回だけ頷いてから、私は口を開く。
「……でも、甘すぎるのは好きじゃない」
テンションの低い私を補うように、彼はいつも弾丸トークを繰り広げる。私はいつも、それを適当に聞き流している。
今日も今日とて、そのルーティンが始まると思っていた。
「そっか」
返ってきたのは、そんな素っ気ない音だけで。
拍子抜け、というか、前から来ると思ったら後ろから押された、みたいな。彼にしてはあっさりとした返事に、思わず瞬きをぱちぱちと繰り返す。
そこで初めて、隣の顔を見上げてみた。
適当に笑っている彼はいなくて、代わりにどことなく硬い表情の津山くんがいるだけだ。具合でも悪いんだろうか、と少し心配になった時。
「あ、あー……前から思ってたんだけど、さ。西本さんの髪ってさらさらだよね」
「は?」



