最近の津山くんは、やたら私に絡んでくる。ああ、こんな風に数多の女の子を誑かしてきたんだろうな、という薄っぺらい言葉を駆使して。
そのノリが嫌いだ。私が見つけた、幼くて可愛い津山くんじゃないから。へらへらして適当にぬるま湯を揺蕩っている彼は、好きじゃない。
「……いま俺が誘ってるの、西本さんなんだけど」
む、と眉根を寄せて、彼が拗ねたように文句を垂れる。
そんな顔をしたいのは、私の方だ。どうしてこっちが悪いみたいな空気になっているのか。
「お願い。……だめ?」
私の顔を覗き込んで、上目遣いで乞う男の子。この手法は、十八番なのだろうか。それとも自然発生的な何か?
もっと強気に、偉そうにしてよ。弱り切った表情でお願いしないで。
「だめ……では、ないけど」
「ほんと? よっしゃ、ありがと」
結局負けた。負けてしまった。後からやっぱり悔しいし、もはや憎たらしい。
それなのに、津山くんは途端に表情を明るくするから、ますます気に入らなかった。
目的地は全く決めていなかったけれど、彼が適当に見繕ってくれたらしい。
知り合いに会いたくないから街中はやめて、と申告したら、俺も嫌だからそっちには行かないよ、と返された。自分から誘っておいて、失礼すぎる。
「西本さん、甘いの好き?」



