ピーク・エンド・ラバーズ



良かった、と岬が苦笑し、ゆっくりと息を吐き出した。


「……加夏ちゃん、ありがと」

「な、何が」

「さっき、加夏ちゃんが俺の代わりにちゃんと断ってくれたから」


彼の手が伸びてきて、私の頬を撫でるようにそっと触れる。

一応コスプレとはいえ制服を着ているせいか、懐かしい記憶が蘇った。
高校二年の修学旅行で、テーマパークを訪れた時のこと。ちょうど今時期だったと思う。


『津山ノリ悪!』

『お前さては怖いんだろ? そういや昼間も頑なにそういう系乗らなかったもんな?』


ホラー要素のあるアトラクションに乗るのを渋る岬に、みんながそれぞれ文句を言っていた。
彼はあの時から根本的な部分は変わっていない。誰よりも場の空気を尊重するし、困っている人を放っておけないし、断ることも苦手だ。

そのせいでやきもきすることだってあったけれど、私は彼のそういうところに惹かれたのだとも思う。


「……岬は、優しすぎるんだよ」


告白されて相手を無下にできないところも、私の顔色を窺って手を繋ぐことすら躊躇していたところも。

分かるの。みんながどうして彼を求めて集まるのか、彼が中心にいるのか。
岬が作り出す空気は、どうしたって居心地がいい。


「加夏ちゃんも人のこと言えないけどね」