ピーク・エンド・ラバーズ



ばたばたと廊下を早足で進んだ二人が、玄関から出る前に立ち止まる。


「三十分くらいで戻ってくるから!」


じゃあねえ、と間延びした芽依の挨拶を最後に、ドアが閉まった。

落ちた静寂に、岬と二人でどちらともなく顔を見合わせる。


「……気ぃ遣われちゃったね」


へらりと相好を崩した彼に頷いたはいいものの、一体この空気をどうしろというのだろう。
とにかく落ち着かなければ、と腰を浮かせた時だった。

かたん、と背後で物音がして振り返る。


「え、」


すぐさま私の腕に引っ付いてきた岬は、今にも死にそうな表情で体を震わせていた。


「な、何の音……?」

「ちょっと私見てくる」

「えっ、ま、」


彼の拘束から上手くすり抜け、立ち上がったまさにその時。


「待って!」


岬が叫びながら私の腕を強く引いたかと思えば、次の瞬間には彼の上に倒れこんでいた。
さっきの物音よりもよっぽど大きい音で床に背中を打ちつけたらしい彼が、眉根を寄せて痛みに耐えている。


「ちょっと、大丈夫?」

「だ、大丈夫。ごめん、引っ張っちゃって……怪我してない?」

「私は別に……」