ピーク・エンド・ラバーズ



ピースサインを掲げて得意げな芽依に、遠慮会釈なく顔をしかめてしまう。
そんな私の様子を見て、芽依が首を傾げた。


「あれ、加夏ってホラー苦手だったっけ」

「いや……」


違う。私じゃない。この場において今もっともピンチなのは私じゃなく――


「……え、岬。お前どうした?」


体の左半分が急にずっしりと重い。顔面蒼白で私の腕に抱きついているのは、岬に他ならないのだ。

彼はホラーが大の苦手である。幽霊だとか怪奇現象だとか、そういう類のものが本当に駄目で、たまに「いま物音がした」と夜に電話をかけてくることがあるくらいだ。

苦手なものの一つや二つ、誰にだってある。それがたまたまホラーだっただけだ。
それは分かるのだけれど、ここまで怯える彼を見るたびに、それって彼女側の行動では? そして、私のポジションは本来彼氏側のものでは? と、何とも言えない気持ちになる。


「……この人、そういうの無理だからさ。今日は諦めてくれない?」


岬の背中に手を回して、軽く宥めるようにさすってやる。
彼は心の不調が顕著に体にも影響を及ぼすタイプだ。今晩は眠れない、などと言い出されては、また睡眠不足になってしまう。


「あー……うん、それは分かったけど……」