背後から――否、耳元で聞こえた声に、肝が冷える。
顔だけ後ろを向くと、拗ねたように眉根を寄せる岬がいた。
「うわって何……ひどくない?」
「びっくりするでしょ、急に後ろから来たら」
気配を消して接近するのをやめてもらいたい。本人にその気はないのかもしれないけれど。
岬は不満げな表情を隠すことなく、だって、と切り出した。
「加夏ちゃんとケースケが、いちゃついてるから」
「はあ? 馬鹿じゃないの」
「俺、似合ってるって言われてないんですけど……」
ちらりと上目遣いで窺ってくるのは彼の必殺技である。つまりこの男は、褒めて、と言っているわけだ。
そして私は、そんなあざとい仕草にすら絆されてしまう、ちょろい女なわけで。
「……似合ってるよ。可愛い、感じで」
「可愛いって言われても嬉しくない……」
「じゃあかっこいい」
「じゃあって何!」
じゃあはじゃあだよ、ばか。可愛いって、私の中では最大級の誉め言葉なんですけど。
内心そんな言い訳を付け足していると、
「おい家主ー。いちゃついてんじゃねえよ、どの皿使っていいんだよー」
「そうだぞ家主ー。それくらいで俺にガン飛ばすなー」



