「加、夏ちゃ……っ」
「うん」
「ごめ……好き、」
「うん。私も、ごめん」
短い髪を整えるように、彼の頭を優しく撫でる。
可愛いというよりも、愛しいという感情が自分の中に確かにあった。そして、それが愛なのかもしれないな、と傲慢なことを思った。
ひとしきり泣いた後、ゆっくり顔を上げた津山くんが、物欲しそうに目を合わせてくる。
さっきまで子供のように喚いていたのに、今の視線には雄々しいものが含まれていて、少したじろいでしまった。
「……加夏ちゃん、」
「だ、だめ。あの、もう、行かないと」
途端、不安げに眉尻を下げた彼に、「大丈夫」と声を張る。
「絶対戻ってくる。話し終わった後、戻るから」
「でも、」
「今日はここに泊まる。……だから、迎えに来て」
そこまで伝えると、津山くんは納得したのか、こくりと一度だけ頷いた。
「約束」
体を離してから、小指を差し出す。
ややためらいながらもこちらに伸びてきた彼の指をさらって、指切りげんまん、と幼少期以来にその歌を口ずさんだ。
「じゃあ、行ってくる」
「加夏ちゃん」
背を向けた拍子に呼ばれて振り返れば、津山くんは自身の濡れた頬を手の甲で拭い、控えめに口角を上げた。
「いってらっしゃい」



