ピーク・エンド・ラバーズ



私が体を起こすと、津山くんは特にそれを咎めることもなく、呆けたように俯いていた。


「岬」


なだめるようなトーンが混じっていたからか、私の呼びかけに、彼はびくりと肩を跳ねさせた。案の定、恐る恐るといった具合に上がった視線から、内省の気配が読み取れる。

私は精一杯口角を上げた。うまく笑顔をつくれていたかは分からないけれど、今の彼のためなら、ハリウッド女優にでもなってやろうと思った。

そうして、すっかり小さく丸まってしまった彼の背中に両腕を回す。一瞬動揺したのか、身じろぎをした彼を封じるように、ぎゅう、と力強く抱き締めた。


「加夏ちゃ――」

「好きだよ。私は、岬が好き」


ねえ、私たち、本当はきっとそこまで相性は良くないね。おんなじこと何回繰り返すんだろうって、自分のせいだけれど、この先も多分そう思う。
でも、あの時とは違うからね。もらった気持ちを返したいっていうよりも、きちんと自分の気持ちを伝えていきたいんだよ。


「前は岬と同じじゃなかったかもしれないけど、今は同じ。これくらい、好き」


俺のこと、ちょっとは好き? って、浮かれたように聞いてきた彼を思い出す。
あの時は少し、首に腕を回しただけだった。今はもっとちゃんと、しっかり両腕で彼を受け止めて、体温を分け合っている。