でも、と私の瞳を視線で掬い上げて、彼が笑う。
「ダサくていいよって、加夏ちゃんが言うからさ。もうそれだけで、ほんとは泣きそうなくらい、嬉しかった」
「……津山くん、」
「まじで加夏ちゃんにはカッコ悪いとこばっか見せてるけど、許して」
許すも何も、私はカッコ悪い津山くんが好きなんだけれど。
心の中だけでこっそりそう付け足すのがやっとだった。ストレートに紡がれた彼の本音は、遠回しにずっと「好き」と言われているみたいで、意図せず顔が熱くなる。
そろそろと視線を上げれば、たい焼き屋の近くにまた看板が見えた。
「津山くん、覚えてる?」
「え?」
私が指さしたのは、「肉まん」の文字。それを見た彼の顔が、親しげに歪んだ。
「あー……ちょっと正直、ダサすぎて忘れたいけど」
「すっごい色んな人に見られて、私の方が恥ずかしかった」
「すんません……」
ちょうど受験期。一人教室で落ち込んでいた津山くんを無理やり引っ張って、コンビニの前で肉まんを頬張ったこと。あんなに泣く彼を見たのは当時初めてで、さすがに若干困ったのを覚えている。
「まあ、あのまま一人で泣かれるよりは、全然マシだったけど」



