ピーク・エンド・ラバーズ



休日の喧騒も、路地に入るとさほど気にならなくなる。
二人並んでアスファルトで舗装された道を歩きながら、目に入ってきた店や看板をダシに、時折たわいもない会話を交わす。

そこに別段甘さはなく、大学からの帰りやバイト後のやり取りもこんな調子だった。あまり普段と変わり映えしない時間が流れているような気もするけれど、私は穏やかな空気が好きだ。
遊び人でもなく、みんなの人気者でもなく、ただの一人の男の子として、彼が隣にいてくれるような感覚がするから。


「……あ」


不意に津山くんが声を上げたかと思えば、そのまま立ち止まった。
つられて私も足を止め、彼の視線の先を辿る。


「加夏ちゃん、覚えてる? 前にたい焼き食いに行った時のこと」


店先にさげられた提灯が印象的だった。あの時入った店とは外観も雰囲気も随分と違うものの、そこには確かにたい焼き屋がある。


「……うん。覚えてる」

『好きじゃないのに期待させるって、津山くん見かけによらず残酷だよね』


人を傷つけた記憶を、そう簡単には忘れない。私の中ではあまりいい思い出とは言えなくて、むしろ苦い思い出に分類されていた。


「俺さ、あの時だったよ。加夏ちゃんのこと、ああ好きだなって思ったの」