ピーク・エンド・ラバーズ




待ち合わせ場所には十分前に着いた。
知り合いに見られるのが嫌だから、と高校生の時のように街中を避けることはせず、比較的人通りの多い駅で落ち合う。


「あ、おはよ」


こちらに気が付いた津山くんが、片手を挙げて微笑む。

思えば、彼と二人で出掛けるのは、付き合ってから初めてのことだった。
それこそ私が「デート」なんて単語を持ち出した時、津山くんはしばらくフリーズしてしまったくらいだ。彼に告白された日以来に「ちょっと俺の顔、殴ってくれない?」と言われたので、「夢でもないし耳鼻科も行かなくて大丈夫だよ」と教えてあげた。

まあつまり、それほど私の言動がらしくなかったということなのだろう。

ごめん待った? 全然。
意図せず定番のやり取りをしてしまって、内心むず痒くなる。


「じゃあ行こっか。今日ちょっと歩くけど、大丈夫?」


昨日の時点で同じようなことを聞かれていたので、彼の質問にためらいなく頷いた。
履き慣れているスニーカーに視線を落とし、靴紐が解けていないか確認する。

今日も今日とて、津山岬は憎たらしいくらいカッコいい。……なんて、本人には絶対に言わないけれど。
モカ色のカットソーから伸びる白い腕が案外たくましくて、妙にどきりとしてしまった。