ピーク・エンド・ラバーズ



でも、と付け足す。


「傷つけられた方は、五年経とうが十年経とうが忘れない。私はずっと、相良くんのことが嫌いだったわけじゃない」


大っ嫌いだったんだよ。
努めて事務的にそう言い放てば、とうとう相良くんは口を噤んだ。

嫌いになるって、相当なエネルギーを使うんだよ。でも、私はそのエネルギーを使ってでも、相良くんのこと、許したくなかった。
初めて好きになって、告白されて、舞い上がって。頷いた私に、どう思ってたんだろう。優しい顔をしておきながら、馬鹿にしていたのかな。

相良くんは私にとって、最初に好きになった人。それから、最初に、――最初で最後に、嫌いになった人だ。
もうこれ以上、私の初めてをあげたりなんかしない。きっとあなた以上に嫌いになれる人、存在しない。


「俺の彼女に何か用?」


背後から一際低い声が飛んできた。そんな声色は聞いたことがなくて、思わず足が竦む。
振り返った先、普段は和やかな垂れ目をつり上げ、眉間に皺をつくった津山くんがこちらに近付いてくる。


「加夏ちゃん、ごめん。来んの遅れた」

「あ……ううん、大丈夫」


即座に答えれば、津山くんは少しほっとしたように表情を柔らかくして、私の手を引いた。彼の背中に隠されるような状態になり、それから津山くんが問いかける。


「あんた誰? ナンパなら他当たって」