ピーク・エンド・ラバーズ



今度は戸惑いの色を滲ませた芽依に、「ちょっと行ってくる」とだけ告げて、私は足早に目的の人物を追いかけた。

こんなに衝動的に動いてしまうのは初めてのことで、自分でも少し驚いている。
でも、だけど、どうしても。会いたいと思った今の気持ちを、大事にしたかった。僅かに芽生えたこの温かい感情を、気のせいだと消してしまいたくなかった。

曲がり角を左に行って、見えた背中。今日も彼は周りに沢山の友人を抱えている。


「津山くん、」


私が口を開いたと同時に、前方の集団から笑い声が上がった。断片的にしか会話は聞こえないけれど、なかなかに盛り上がっているようだ。

その空気に気圧されてしまい、足が止まる。


「で、それを見た先輩が……」

「厳しすぎ! 俺だったら、……でもさあ、」


少しずつ開いていく距離に、目を伏せた。
やっぱり私は、あの中に飛び込んでいけるほど勇敢じゃない。似合わない。つり合ってもいない。

でも、私は――ねえ、西本加夏、それでいいの?


「津山く……」


違う。だめだ。ここで止まったら、前と同じ。


「岬!」