彼と並んで歩きつつ、駅へ向かう。
津山くんはあの日以来、私のバイト先にこうして迎えに来てくれることが多くなった。彼のバイトの終わり時間と被った時や、そうではない時も。
だけれど、長時間待たせるのは私の中のポリシーに反する。申し訳ないし、そわそわしてしまうし。
それを津山くんに伝えたら、分かった、と了承して、彼は「優しいね」と笑ったのだ。あんまりそうは思わなかったけれど、適当に流しておいた。
「加夏ちゃん」
「なに?」
信号が赤に変わる。
足を止めて隣を見上げれば、すぐに彼と目が合った。
「今日の分、まだだよ」
薄い唇が、ふんわりと機嫌の良さそうな音を紡ぐ。
今日の分――なんのこと? と誤魔化すのは、流石にできない。だって、もう毎日繰り返されているやり取りだから。
恥ずかしいけれど、彼が求めているのならできるだけ応えたいとは、思う。こういうことを積み重ねて、自分の気持ちを彼につり合わせていけるのなら、逃げたくないとも、思う。
「……岬」
まだまだ慣れそうにない。だって、「ただのクラスメート」と「友達」である期間が長すぎた。
津山くん。それが、私の中で彼を認識する呼び名だった。
「うん」



