ピーク・エンド・ラバーズ




「飲み放題のメニューはこっちで、この限定ドリンクは飲み放題に入らないです。そこをあんまり分からないで注文するお客さんが結構いるので、最初に説明して下さい」


努めて平坦に、淀みなく喋り倒す。相手の顔は見ない。視線をメニューに固定して、私は指さしながら説明を終えた。


「分かった。ありがとう」


未だ聞き慣れない声が頷いて、礼を述べる。

退勤後、足早に従業員室へ向かっていたところを、彼に引き留められた。反射的に身構えてしまったけれど、彼はどうやら、純粋に業務内容についての質問をしたかったらしい。

他に聞ける人はいたはずなのに、とか、どうしてこのタイミングで、とか、文句は沢山あった。実際に言ってやりたかった。
でも彼の前では、自分はどうしたって強く出られないのだ。


「……あのさ。俺たち同い年だよね」

「そうですね」

「何で敬語なの?」


何で――それをそっちが聞くのか、と若干辟易する。
そんなの、距離間を保ちたいからに他ならない。あくまでもアルバイトの一員同士。その線引きをしっかりしたかった。

つと僅かに顔を上げれば、相良(さがら)と彼の苗字が印字されたネームプレートが目に入る。


「同期二人しかいないし、仲良くしたい……かなって」