ピーク・エンド・ラバーズ



最初から、ずっと、今でもそう思う。
この人は本当に、ばかなのだ。だって、そんなに全部私に渡してしまったら、この先どうするの。もし他の人を好きになった時、私に返してって言えるの? 言えないでしょう。


「何で、そんな……私なんか……」


私なんて、どこにでもいるような人なんだよ。芽依みたいにお洒落で可愛いわけでもないし、素直に言いたいことも言えないし、恋愛下手で面倒で、無駄なこと一人でぐるぐる考えて。


「津山くんにそこまで言ってもらうほど……私、なんにもないのに……」


だから、ずっと、苦しかった。つり合うものが何一つなくて、それを周りに指摘されるのが怖くて、本気になるのもなられるのも嫌なのは、逃げ道を残したいからだった。


「……加夏ちゃんだけだよ」


いつの間にか滲んだ視界が、突然クリアになる。
津山くんの指が優しく私の目をなぞって、眼前に彼の穏やかな笑みが広がった。


「加夏ちゃんだけが、本当の俺のこと、見つけてくれた」

「え……?」

「カッコ悪い方が好きって言われたの、初めて。どんなにダサくても、加夏ちゃんは俺のこと、ばかにしなかった」