ピーク・エンド・ラバーズ



そんなに尽くされても、私が返せるものは何もないんだよ。
人からもらった善意は返したい。借りたものもきちんと返したい。目に見えるものであろうとなかろうと、与えられてばかりじゃ気味が悪いから。

だから、津山くんがいつも無条件にくれるものを、私はどうしていいか分からない。どう頑張ったって、きっと私は彼と同じ熱量で恋していないのだ。


「じゃ、待ってる」


津山くんは一方的に告げて会話を切り上げると、友達の待つテーブルへと戻っていった。
何話してたのー、と、女子の鼻にかかる声が遠くで響く。見られている。品定めされているような気が、してしまう。

……だめ、仕事しないと。
頭を振って無理やり思考のスイッチを切り替えた。

津山くんのいるテーブルの近くで空いたグラスやお皿を片付けていたら、自然と見たくないものが視界に入ってきてしまう。
明るい髪色、ピアス、派手なメイク、ネイル。それらを全て自分のものにして、華やかに笑う女の子。津山くんの隣に座っている子が彼の肩に触れただけで、何だか惨めな気持ちになる。


『えー、それは知らなかったわ。なんか意外。岬にこんなしっかりした彼女がいるとは』

『なんか意外。姉ちゃんああいうタイプ苦手だと思ってた』