ピーク・エンド・ラバーズ



店の出入り口から彼に視線を移し、固まる。
その呼称はつい先日から変わったばかりで、まだ慣れていない。津山くんはいま明確に店員ではなく、「私」に話しかけていた。


「今日バイト何時まで?」

「……十時、だけど」

「待ってるから一緒に帰ってもいい?」

「待ってるって――いま何時だと思ってんの、まだ八時だよ」

「うん。待ってる」


だめだ、伝わってない。できれば速やかにお引き取り願いたいんだけれど。
それに、バイト終わりはなるべく一人で帰りたい。誰かと一緒だと気を遣うから、余計に疲れるのだ。


「ええと……お店的にも、長居されると……ちょっと」

「あー、いや、あいつらとはもうそろお開きだけど。適当にそこら辺で暇つぶししてるから、一緒に帰ろ」

「あと二時間も?」

「うん」


分からない。そんな時間があるなら、家に帰って好きなドラマを見たり、ゆっくりゲームをするなり、いくらでも有意義な過ごし方はあるだろう。
私と帰るといったって、せいぜい一緒にいられるのは三十分だ。そのために二時間も待つだなんて、非効率にもほどがある。


『しっかし、毎回健気だねー。津山氏って、意外と尽くしてくれるタイプ?』