盛り上がる先輩たちを横目に、私は静かに着替え始めた。バイト後なのに元気だな、と感心してしまう。
「いや待てよ、本当に栞に彼氏はできたのか? あまりにも彼氏が欲しいと願いすぎて、願望が見せた幻覚という線は……」
「私の彼氏ファンタジーかーい!」
「確かに確かにー。実物見ないと信用できないわ」
「おうおういいだろう。来週ここに彼氏連れてくるから、びっくりして倒れるなよ!」
元気なやり取りを黙って聞き流していたら、先輩が突然こちらを振り返った。そして「加夏ちゃんも栞の彼氏、見たいよね?」と話しかけてくる。
「あ……そうですね。彼氏さん、どういうタイプの方なんですか?」
私の質問に、栞さんは顎に手を当て、わざとらしく考え込んだ。
「まあそうだな~……目玉焼きにはソース派、って感じかも」
「何の話でしたっけ?」
「加夏ちゃん、合ってる。合ってるよ、彼氏の話。栞が浮かれてるだけだから」
浮かれてる、と聞いて僅かに首を捻る。
浮かれる――そうか、彼氏ができて、普通はそういう気持ちになるわけだ。恋に恋する乙女、とまではいかなくとも、ふわふわ揺蕩うような感じ。
「……あの、先輩方って、好きな人いますか?」



