「ふぅ」

たった一呼吸で息を整える。
深呼吸で高ぶる気持ちをおさせる。

具現化する有希乃をイメージする。今までと違い、笑顔の有希乃が浮かび上がり、そのまま目の前にいるかのように感じる。

まだだ、この程度じゃない。オレが具現化したい有希乃は表情だけじゃなく雰囲気からも幸せを感じとれるくらいになりたい。

ある意味それは有希乃じゃないかもしれない。全くの別人になり得るかもしれないけど違う。実際にどう具現化出来てもそこには魂がある。それはオレが具現化するものじゃないし、有希乃本人のものだ。だから間違わない。

――そしてもう一つ。奈々と話していて理解したことがある。

オレがしようとすることは有希乃を生き返らせることではないということ。
有希乃は死んだ、その自覚は……ある。しかし具現化出来た有希乃は魂は有希乃のものでもそれは本人ではない。

はっきりと自覚する。具現化した有希乃は人間じゃない。けど間違うな、だけどそれはオレに使えるこの世ただ一人の永遠の召使い、オレの右腕となるいわば式神に近い存在。