「お前はいい犠牲になりそうだ。それにオレの存在を喋られると困るのでな、消えろ」

見下す眼。

振り下ろされる剣。

そして、貫かれる体。これは錯覚ではない。

私は死ぬ、今、正にその瞬間。
何も出来ないで死ぬ……駄目だ。私はまだ死ねない。せめて灼蜘に会うまでは。

けど、どう足掻いても無駄なことだった。一瞬に私の意識は消される。もう二度と目覚められないかもしれない。

「即死とはいかないか、わざわざ即死を選んでやったのに自分から苦痛を選ぶか。まぁもって一分だろう」

そのまま地面まで突き刺した剣を乱暴に引き抜き、もう何も目もくれずにまた森に消えて行った。

――苦痛で意識が戻る。

即死でないのなら良い。
黄龍は知らない、私に治癒能力があることを。だから一分ではなくもう少し耐えることが出来る。

しかしその代償として痛みがある。持てる神素全てを治癒にあてているため、痛みを消せない。けどそれで良い。
それなら意識が飛ばない。
もがこうがなんでもいい、灼蜘が来るまで耐えられるなら……。

まともに呼吸が出来ず血の池で暴れる。
この視界、真っ黒に染まるまでに灼蜘が来てくれないと私は……。