時が進むに連れて父の部下とその男の部下と玄武の軍には二つの勢力まで出来ていた。そして時間を重ねるにつれて父の部下はその男の部下となっていた。

父のカリスマ性がそう簡単には崩れる訳がなかった。だけど現実では崩れていた。その原因、いや策略はその男の仕業。
あることないことをでっち上げ、そして自分のミスを全て父に押し付けるという、自分を株を上げ、父の株を下げまくる最低の策に出た。そんなことを信じてしまった部下達もどうかと思うが、最終的に全てを知った父はただ、

『オレの信用が足りないだけの話。当然の結果だな』

と、全然余裕の言葉だったそうだ。

もちろんこの時の父は何も知らない……はずである。それは誰も知らないこと。
とりあえず母上は今を見ても分かるように生真面目で、玄武のために働くということを信念としていた。だからこそどんな雑用でも文句も言わずにこなした。その評価を誰にされる訳でもなく、ただ玄武である父に貢献できると信じるのみだった。
だからどんなに悪い噂が流れようとも、どんなに失敗話があろうとも、父が認めない限り認めなかった。

男は何を思ったのか完全に玄武の座を乗っ取ろうと王手をかけてきたらしい。その時すでに父につく部下は数名ほど。他はすべ男の部下になっていた。その数か月、父は全く玄武らしい言動を起こしていなかったから。
そしてその理由を男は危険な実験を行っているからと訳の分からないことを言い出したのだ。部下全員が集まる中で言われた言葉に、父はあっさりと承諾した。
周りの空気はすでに男が話した地点で決まった雰囲気だったのが原因ではないかと思われる。
この時、父は完全に玄武としての威厳を無くしたそうだ。全てその男に地位を奪われた。その話を聞いた時、オレは信じられなかった。