――母上がまだエデンにいた時代。そして年で言うと18歳の時のこと。

その時代の母上は玄武の部下として働いていたらしい。しかも下っ端も下っ端、直接父と関わることのない仕事柄だったそうだ。

その当時から父はその才能から何でもこなし完璧だった。天才であるからこそつまらないことが多いらしく、神出鬼没でどこにいるか分からない、いつも行方不明だったらしい。
しかしそんな父の言動にも部下のみんなはほとんど信頼していた。それほどのカリスマ性も持ち合わせていたそうだ。

――だが、反感を買う人もいない訳ではない。父のことを玄武として、もっと示しの付く態度でいるのが当たり前だと罵っている男がいた。
その男は父の部下でありながらも玄武にふさわしいのが自分で、父がたまたま玄武を継いだに過ぎないと強気でいた。父もその男について知っていたらしいが特段何も言わず黙っていた。

そんなある日その男が動いた。玄武である父の仕事を奪いだしたらしい。父はいつもどこにいるか分からないため、先に行動すれば絶対に後れをとることはない。それをいいことにその男は父の座を奪いにかかった。
その事態を父が知った時、

『仕事が減って楽出来る』

と、さもどうでもいいように言ったそうだ。その余裕がどこから出てくるやら分からない。