やはり母上はオレを待っていた。今日は助歌の姿はない。助歌がいる時は半々くらい。多分いない方が少し多いか? まぁ、いてもいなくても同じこと。

「母上、今日も来させてもらいました」

それがオレの決まり文句にして挨拶。
だから母上も同じように答える。

「今日も来てしまったのですね」

もちろん、待っていたとはいえ、待ちわびていた訳がない。むしろ出来るなら来ないで欲しかっただろう。けど、オレは来る。だってまだ認めてもらってないから。

イスに座り込んだ母上の顔は険しい。
分かってる。覆せないと分かっていることに挑戦してるんだ。挑戦されている側はなんともいい迷惑だろう。
オレが逆の立場だったら即投げ出す所だ。だけど母上は投げ出さず、正面からオレの挑戦に対抗してくれる。相手にしてくれるのは息子だからだろうか? それとも投げ出したところでオレが追いかけてくるのを分かっているからだろうか?
まぁ、きっと両方だ。だから今日も待っていた。

「灼蜘、昨日言いましたね? もし、今日もするようなことがあるならこちらも強行手
段に出ると?」

確かに昨日の帰り際、母上はそんなことを言っていた。けどそんなことに臆するオレではない。だから堂々とやって来たんだ。
けど、今の言い方、何かあるか……脅し文句ではないらしい。