――さて、今日も行くか。

夜、晩飯も済ませて、風呂も済ませた。ついでに言うなら訓練だって勉強だって済ませた。今、この時間は休憩時間であり、自由時間である。
普段ならきっと音楽でも聴いて本でも読んでいたかもしれない。それは多分、結構前の話。
そうだな、きっと有希乃が現れる前の話か。
なら、今は何をしているか。
オレが出来ることは二つしかない。
一つは有希乃の言葉を信用して待ち続けること。
そしてもう一つ、それが今、オレがやろうとしていることでもある。

「今日こそは絶対に……」

オレは母上の部屋へと向かう。
きっと母上もこの時間帯に来ることを分かって待っている。それほどまでオレはこの自由時間、母上の部屋に訪ねている。

理由はもちろん、有希乃の召使い復帰のお願い。

今日は何回目になるだろうか? もう覚えてない。ただ通いだしてから同じ曜日は二回見たか……。

「はぁ」

母上の部屋の前で溜息。
一体、いつになったら帰ってくるんだ? こんなにオレを待たせやがって。でもまだお前の居場所を確保してないから戻られても困るけど、やっぱ……会いたいぜ。

二度、頭を振り、同時に弱音を振りほどく。
これは真剣勝負だ。絶対に母上に認めさせてやる。有希乃の必要性を。
そうしてオレはノックの後、部屋に踏み込んだ。