「安心して怪我してもいい」
 
正直、声が正面以上にどこから聞こえるか分からない。それはつまり、正確な位置を知らないということ。
だからこそ有希乃の声と重なる一線をオレは見切れない。

「ちっ!」

すかさず避けようと後退するがそれが有希乃の狙いらしい……というか狙いなんだ。だって何度もオレはその一撃を受けて戦闘不能にされたんだからな。

反射的に後退しながらも有希乃の最強だろう一撃……高速いや光速の突きの威力を殺すように体を捻る。

――が、それすらも罠。当たると思った一撃をオレは避けてしまった。いや正確に言うならば、避けされられた。

あの細足は一体どんな鉄で出来ている? いやどんな衝撃波を生み出す砲台なんだ。まさか一撃で視界をクリアにされるとは思わなかった。


有希乃、強すぎ……それがオレの最後の感想でした。